劇団四季の「アルデールまたは聖女」の公演を観てきました。

「アルデールまたは聖女」
2009年1月31日(土)17時30分開演
劇団四季 自由劇場

(出演者)

将軍 : 志村 要
将軍夫人 : 斉藤昭子
伯爵(将軍の義弟) : 味方隆司
伯爵夫人(将軍の妹) : 野村玲子
男爵(伯爵夫人の恋人) : 栗原英雄
ニコラ(将軍の二男) : 田邊真也
ナタリー(将軍の長男の妻) : 木村花代
アダ(女中・将軍の情婦) : 団こと葉
アルデールの恋人 : 高橋征郎(劇団民藝)

(あらすじ)

舞台はフランスの避暑地、名将レオン・サンペ邸。

主人の将軍は、嫉妬で精神に異常をきたした夫人に隠れて、若いメイドと浮気をしていた。

長男の大尉は、20歳の美しい妻を邸に残したままアジアから帰らず、士官学校生の多感な次男は幼馴染のその兄嫁に複雑な感情を抱いている様子。

将軍の妹の伯爵夫人リリアーヌにも夫にも公認の愛人がいた。

もう一人の妹アルデールは、生まれつき身体に障害があり、人生の欲望とは無縁の聖地のような生活を送っていたのだが、その彼女が同じ障害者の家庭教師と恋に落ちていることが分かった。

将軍はアルデールの恋愛のことで家族会議を開く。人々の間に危うく保たれていたバランスが崩れ始めていく・・・

(感想)

「アルデールまたは聖女」は、劇団四季の旗揚げ公演として1954年1月22日から3日間上演されています。この作品は55年という月日を経て、新しい世代を担う劇団四季の俳優たちによって鮮やかに蘇りました。

タイトルとなっているアルデールは、結局一度も姿を見せることはありませんでした。アルデールに求めていることと、自分自身が犯している過ちとの間でそれぞれ苦悩する様子を障害をもったアルデールを中心として表現しており、脚本の構成自体の完成度がとても高いと感じました。

劇団四季は、旗揚げ公演当時、この作品を上演するにあたり半年間の準備をしたということですが、55年が経過してもなお色褪せていませんでした。半世紀を経ても、観客に共感させられる普遍的なテーマを選択できるスキルが、当初の劇団員達に存在していたからこそ、劇団四季がここまで成長できたのだろう、と感ぜざるを得ません。

次に俳優さんたちの演技ですが、一番印象に強く残ったの伯爵夫人役の野村玲子さんです。野村さんというと、今までは「オンディーヌ」の水の精オンディーヌ役や「李香蘭」の李香蘭役、「赤毛のアン」のアン役など、可憐な少女を演じることが多かった。しかし、今回は伯爵夫人として、夫である伯爵と自分の恋人である男爵との間にある微妙な距離感を巧妙に演じており、とても説得力がありました。

そんなことを思っていたら、Yahoo!知恵袋でもっと直接的な書き込みがありました。

先日劇団四季のハムレッットを観に行ったんですが、オフィーリア役の野村玲子って... - Yahoo!知恵袋

ボクも基本的には上記の意見には同感です。劇団四季の代表である浅利慶太氏の奥さんということで、主役を射止めているのではないか、というの指摘はもしかしたら表面的であり薄っぺらいものなのかもしれません。キャリアをつめばそれだけ演技に深みを増していくわけですし。実力がある俳優であることは、誰もが認めているかとおもいます。不思議なことに、多少年齢差にギャップを感じてしまいながらも、野村さんの出演する舞台を観にいくため、足しげく劇場まで通っているのも個人的な面では事実です。

年相応というと少々失礼なのかもしれませんが、年をとっていくことは決して悪いことではなくて、おそらく若かったころの野村さんが、この将軍夫人役を演じても、独特な妖艶な雰囲気は出なかったはず。個人的には、もっともっと”大人の女性”の演技が見てみたいなぁ。そういった意味で、野村さんのこれからが楽しみです。

This entry was posted on 2009年2月1日日曜日 at 11:40 and is filed under . You can follow any responses to this entry through the comments feed .

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